鹿児島の交通系ICカード「1割加算」サービス、2024年10月で終了へ――FeliCa活用の仕組みにも見直しの波

鹿児島市を中心に広がる交通系ICカード「ラピカ」や「いわさきICカード」の利便性を支えてきた「積み増し1割加算サービス」が、ついに2024年10月で廃止されることが明らかになりました。

これらのICカードは、FeliCa技術を活用した非接触型の電子マネーで、地域のバス利用者に根付いてきた交通インフラの一つ。しかしその裏側では、運営事業者にとって大きな負担がのしかかっていました。

FeliCa搭載ICカードの“お得”が消える背景

1割加算サービスとは、ICカードにチャージ(積み増し)すると、金額の1割が自動的に上乗せされるという仕組み。2005年のラピカ導入時から続き、共通回数券のようなお得感を提供してきました。

しかし、FeliCaベースのICカード利用が進む中で、この“加算分”は実質的に事業者が負担しており、経営を圧迫する要因に。例えば、鹿児島市交通局はこの制度の維持だけで年間3,100万円の収益機会を失っていたとされます。鹿児島交通、南国交通を合わせると、年間負担額は7,245万円にも達していました。

システム改修には約1,800万円の費用が発生しますが、今後の持続可能な交通運営を考える上では「必要な決断」と言えるかもしれません。

全国ICカード対応よりも「クレジットカード決済」が主流に?

全国的なSuicaやPASMOといった交通系ICカード(いずれもFeliCa規格)への統一も検討されたことはありましたが、導入には多額のコストと事業者間調整が必要です。現状、鹿児島ではむしろVISAなどのクレジットカードによるタッチ決済が普及してきており、観光客や出張者の利便性も向上しています。

「全国共通より、世界共通へ」。FeliCa ICカードとクレカ決済の併用は、今後の地域交通に新たな選択肢を提示しています。

「敬老パス」も見直し不可避に?ICカードによる高齢者支援と負担

さらに議論の的になっているのが、「敬老パス」と呼ばれる高齢者向けの運賃補助制度。1967年から鹿児島市内でスタートし、現在はFeliCaベースのICカードで運用。市・事業者・利用者が運賃を3分の1ずつ負担する仕組みです。

しかし、発行枚数は累計11万5,000枚を超え、事業者の年間負担額は2億5,000万円規模に。高齢化が進む中で、将来的な見直しは避けられないという声も上がっています。


地域ICカードのあり方を問う時期に

ICカードの加算廃止は、FeliCaという日本独自の高性能非接触技術を活かしてきた地域交通の転機と言えます。地域に根差したICカードサービスと、インバウンド対応を視野に入れたクレジットカード決済の共存は、これからの持続可能な交通インフラのあり方を考える重要なテーマです。

地域ICカードの未来を考える上で、利用者・行政・事業者が一体となった議論が求められています。